ネパールの障害当事者が実施している

大地震の被災障害者の救援活動

ネパールには、首都カトゥマンドゥとポカラに自立生活センター(CIL)がありますが、どちらの地域も、2015年4月25日の大地震とその後の余震で甚大な被害を受けました。センターのスタッフである障害当事者自身も様々な形で被災し、未だに仮設テントで生活しているスタッフもいます。そんな中、日本の「全国自立生活センター協議会(JIL)」の呼びかけに呼応し、日本国内各地で被災障害者救援のための募金活動が展開されています。その義援金を受けて、CILカトゥマンドゥ、ポカラの自立生活協会ネパールで、障害当事者自身による、被災障害者の救援活動が行われています。各センターからの報告書を抜粋しました。

CILカトゥマンドゥによる救援活動

【2015年7月12日付け報告】CIL活動中!救援と復興 2ヶ月間のインパクト

 2015年4月25日、ネパールでマグニチュード7.9の大地震があり、多くの地域が被害に遭いました。人口が密集した首都カトゥマンドゥを始め、シンドゥパルチョーク、ゴルカ、ヌワコット、ダディンなどの地域が最も影響を受けました。また、このようなとてつもない震災に対応できるような基礎的インフラや、救援物資の整っていない辺境地域も被災しています。ほぼ百年間で最悪の自然災害です。最新の統計では死亡者数は8,943名にのぼり、重傷を負った人やがれきの下敷きになった人があふれています。最新報告によると負傷者数は22,059人となっています。人々は、今回の地震で、無数の命を失うとともに、家や地域コミュニティ、生きる糧をも失いました。死者の中には、辺境地域で亡くなった46名以上の障害者や、未だに行方不明の方も含まれています。今回の地震で、12,000人の障害者が被災したと言われており、2,000人が負傷し、そのうち600人が脊椎損傷を負ったと言われています。障害のある親の亡き後、その子どもたちも悲惨な状況に追い込まれています。中には亡くなったり、行方不明になった子どももいます。このように悲惨な地震により、恐るべき多くの人命、財産、動物が失われたと言えます。


 私たちの国ネパールとその国民は、この災害を生き延びるため、可能な限り全ての支援を必要としています。地震で一番最初に被災するのは障害者です。インフラ、安全な場所、救援物資、介助者サービス、車いすが不足しているため、おびただしい数の人々が現在も危機に瀕していますが、この状況を変えることはできます。多くの地域で救済が待たれており、被災者の状態は予想以上に厳しいものです。他の人たちと同様に、障害者も家族と一緒に、空き地にテントを張って屋外避難しています。しかし、テントの数が限られているので、夜間や雨が降れば状況はさらに悪化します。ネパールには、車いすユーザーが使用できる公共のトイレ、公共交通機関、インフラはほとんどありません。誰もが食料危機を恐れて食料を備蓄しているので、食料品の市場価格が高騰しています。政府からの救援資金も全ての地域に十分に届いていません。

 

 また、多くの人が地震で負傷し、障害を負っています。障害者の住居も多くが全・半壊していることがわかりました。屋外で暮らすうちにパニックに陥り、いますぐ救援を必要としている人もいれば、ホームレスになってしまった人もいます。住居にひびが入っており、今でも微震が続いているため、怖くて家の中に入れない人もいます。


 障害者自立生活センター・カトゥマンドゥ(CIL)は、2015年4月25日の大震災と、5月12日の大地震によって被災した障害者とその家族や子どもに援助の手をさしのべるべく、この2ヶ月間不休で働き続けてきました。


ジャウラケルにある障害者のための仮設避難所

CILカトゥマンドゥは、地震の被災者を特定したため、彼らの救済に踏み出しました。CILはすぐさま国立動物園の前にあるジャウラケル・サッカー場にテントを設置しました。CILの仮設テントには、カトゥマンドゥ、ラリトプール、バクタプール、シンドゥパルチョーク、ダディン、ネワコット、ラムタンなどから来た80名の障害者とその家族や子どもが避難しました。彼らの多くは車いす利用者で、ポリオ、脊損、CP、切断、盲、精神障害などをもっています。


 テントはネパール赤十字社が設置してくれました。また、食料品、毛布、ベッド、尿道用カテーテル、医薬品、その他被災者がすぐさま必要とする物品を配布するために、ミッション・イースト・ネパール、エンゲージ、日本メインストリーム協会、FNCCI、その他ネパール国内や国際社会の個人の支援者の方々が支援してくださいました。当初数日間は移動式のトイレがなく、動物園のトイレを利用していましたが、車いす利用者が使える形態になっていないため、苦労していました。CILカトゥマンドゥは、強力な資金的な裏付けがない中、右往左往しながらも、支援に踏み切りました。CILは、メインストリーム協会とパキスタンのマイルストーンの支援を受け、移動式トイレを設置することができました。

ジャウラケルの仮設避難所の状況

赤十字社が供与したテント


ラリトプールのチャサルにある新しい避難所への引っ越し

CILカトゥマンドゥは、ジャウラケルに滞在している地震被災者の新居を探してきました。その結果、35人の障害者が、CILの支援を受けて賃貸の部屋に引っ越しました。残る45人は、ラリトプールのチャサルにある新しい避難所に移転しました。この新しい避難所には、ネパール赤十字社が設置したテント10張があり、トイレやキッチンも完備されています。住居を完全に失った障害者や、新居を探すのが困難な障害者が、この新しい避難所に引っ越しました。国内外からの支援を受け、CILが食料品、飲料水、ボランティアを提供しています。

 

車いすと救援物資の配布

CILカトゥマンドゥは、72台の標準タイプの車いすを地震の被災者に配布しました。配布された車いすは、全国自立生活センター協議会(JIL)とネパール政府の支援を受け、パキスタンとネパールで製造されたものです。CILは、この他にも食料品、ブルーシート、毛布、ベッド、尿道用カテーテル、医薬品、その他地震の被災地に住む被災者がすぐさま必要とする物品を配布しています。救援物資は、100人以上の障害者に配布されました。また、被災者が必要な時にすぐ使えるようにと、100名の障害者に対し1,500ルピーずつを提供しました。

 

尊厳のある救援

CILは、食料品の入ったファミリーパックを、障害者の家族200組に配布しました。ファミリーパックには、食料品:米、豆類、油、砂糖、麺類、砕いた米、石けん、浄水タブレット、衛生的なカテーテル、ウロバッグ、その他のアメニティが入っています。

 

ピアカウンセリングと精神的・社会的サポート

1. CILは、仮設の避難所キャンプに住む障害者の精神的・社会的ニーズに応えるため、32名の障害者に対しピアカウンセリングを実施しました。

2. CILは、日常生活支援をする介助者と精神的・社会的救急に対応するカウンセラー9人を動員しました。


レクリエーション活動

CILは、フォーシーズン・ツアー・トラベルの支援を受け、ゴダウォリへの日帰りツアーを実施しました。避難所で生活する障害者たちが、ピクニックやスポーツを楽しみました。ジャウラケル国立動物園も、地震被災者を動物園に招待してくれました。また、マンダラ劇場は、レクリエーション活動として、被災者を劇場へ招待してくれました。

 

アドボカシー活動

CILは、ネパール政府や国内外の組織に対し、定期的にアドボカシー活動を行っています。CILは、地震で被災した障害者を支援するよう要請しています。CILは、女性・子ども・福祉省、国家計画委員会、財務省、JICAネパール、(在ネパール)日本国大使館、赤十字社などの組織とも度々会合を持ちました。また、CILは嘆願書を作成し、ネパール政府、国際NGO、国連機関、銀行、私企業に対し、精神的、技術的、資金的支援を要請しています。

 

アウトリーチ先

カトゥマンドゥ、バクタプール、ラリトプール、ダディン、ヌワコット、シンドゥパルチョーク地区

 

パートナー/支援者

CILが障害者へのアウトリーチ活動を実施できるのも、以下に示した国内外のパートナーの皆さまの寛大な支援と団結のお陰です。

 

1. Nepal Red Cross Society ネパール赤十字社 

2. Mainstream Association Japan 日本メインストリーム協会

3. Japan Council on Independent Living JIL 全国自立生活センター協議会(JIL)

4. STIL, Sweden スウェーデンSTIL  

5. Mission East Nepal ミッション・イースト・ネパール 

6. Susan Henderson from America アメリカのスーザン・ヘンダーソン 

7. Port light Strategies ポート・ライト・ストラテジー 

8. Jacky Chan from Hongkong 香港のジャッキー・チェン 

9. Milestone Pakistan パキスタンのマイルストーン 

10. New Vitality Taiwan 台湾「新活力」 

11. Engage エンゲージ 

12. Korea Association Nepal ネパール韓国協会


詳細はこちらから

ご支援・ご協力いただける方は、お気軽にお問い合わせください。

障害者自立生活センター CILカトゥマンドゥ

事務局長 クリシュナ・ゴウタム(男性)

個人メール: gautamkrishna1978@gmail.com

ネパール ラリトプール クポンドル ジワガル10

電話番号  01-5011087, 01-5526855

団体の公式メールアドレス: info@cil.org.np

Home Page ホームページ:http://www.cil.org.np


ポカラの自立生活協会ネパールによる救援活動

【2015年4月の報告書より】

◆悲惨な地震の被災者となった障害者のための資金造成イベント

4月27日、自立生活協会ネパールは、地震の被災者となった障害者のための資金造成イベントを実施しました。自立生活協会ネパールのメンバーとスタッフがイベントに参加しました。このイベントで集められた資金は、救援物資の購入に充てられました。

◆悲惨な地震で被災した障害者に対する救援物資の配布

4月29日、自立生活協会ネパールのチームは、トゥムキ村を訪問し、救援パッケージをイショル・アレ・マガール(12歳の盲の少年)と、ラメシュ・アレ・マガール(軽度の障害のあるポリオ生存者)の母に手渡しました。トゥムキ村は、ポカラから東へ30kmくらい離れた所にあります。二人とも、悲惨な地震の直後ということで、とても不安定な状況におかれています。

【2015年5月の報告書より】

◆地震被災者の救援

【ポカラ「緑の牧草地病院」での救援活動】

自立生活協会ネパールは、5月29日に、地震で被災した障害者に対して救援活動を行いました。受益者は、ダディン地区、ゴルカ地区、ラムジュン地区、タナフン地区、カンチャンプール地区、ムスタング地区、カリコット地区などの様々な地区の出身者でした。彼らはこの悲惨な地震で受傷し、ポカラの「緑の牧草地病院」で治療を受けていました。影響を受けた障害者とその家族は皆、経済的に非常に困難な状況にありました。そこで私たちは、生存に必要な日常生活用品等を購入できるようにするため、現金を支援することにしました。各自に2,000ルピーずつ配布しました。

【ラハチョーク村での救援活動】

自立生活協会ネパールは、ラハチョーク村で地震の被害を受けた障害者に対しても救援活動を行いました。村落開発事務所の事務員、様々な政党の代表者、保健ワーカー、ソーシャルワーカー、受益者、一般住民が活動に参加し、自立生活協会ネパールのチームと共に時間を過ごしました。3名のろう者、1名の肢体障害者、1名の視覚障害者がこの活動により受益しました。

【クリシュティ村における救援活動】

自立生活協会ネパールは、5月11日にクリシュティ村で地震の被害を受けた障害者に対して救援活動を行いました。原因不明の病気により上下肢が麻痺している寝たきりの肢体障害の女性(リラ・クンワルさん)の家族と、知的障害児(スシル・スベディさん)の家族が、支援を受けました。

◆資金造成のための車いすバスケ大会

地震で被災した障害者とその家族の救援基金を造成するため、5月7日、車いすバスケの親善大会が催されました。バスケットコートにいた観衆の中から、アメリカのサル・ラマ、イギリスのインドラカラ・グルン、アメリカのケイ・カーターが、資金貢献をしてくれました。彼らの寄付により、自立生活協会ネパールのメンバーとスタッフの携帯電話(プリペイド)に十分な金額を入金することができ、救援キャンペーンの際に被災者や関係者と連絡を取る上で、とても役立ちました。

◆アンジャナさんによる日本での資金造成キャンペーン

アンジャナさん(注:2015年4月~6月まで日本で研修)は、日本からも定期的に活動報告をしてくれています。研修も順調に進んでいるようです。また、日本の神戸にあるCILリングリングによって実施されている、ネパールのための資金造成キャンペーンでも、アンジャナさんは主要な役割を担っています。自立生活協会ネパールのチームと相談した上で、CILリングリングの理事会とアンジャナさんは、CILリングリングで集めた募金の総額の25%をJILに寄付して、JILが開始したネパールの災害救援基金に貢献することを決定しました。このことに私たちも感謝とともに責任を感じています。

【2015年6月の報告書より】

◆地震被災者の救援

6月19日、自立生活協会ネパールの事務所で、重度障害者の家族に対する救援活動を行いました。重度障害者の方々は、地震により身体的、または精神的な傷を負ったため、自立生活協会ネパールの近くにある「緑の牧草地病院」で医療リハビリテーションを受けています。彼らの多くは、地震ににより深刻な影響を受けたネパール国内の様々な地区の出身です。受益者は皆、グループ内で彼らの心情を打ち明けました。最後に、オーストラリアの同僚から資金を集めたマノジ・クマール・ラナバットのマネジメントの下、受益者に現金を支給しました。7名の障害者がこの活動で裨益しました。

◆地震で被災した障害者のための仮設シェルターの建設支援

自立生活協会ネパールのスタッフ、スディルさんとスシラさんは、6月19日、トゥマコダンダ村を訪問し、障害者の家の状況を調査しました。地震で住居被害を受けた人のために仮設シェルターの建設支援をしたいというドナーがいたためです。村では、村落レベルの自助グループのリーダーであるピトリラジ・サプコタさんに同行してもらいました。家庭訪問の結果、5軒の障害者宅で深刻なひび割れがあり、家族の命が危険にさらされていることがわかりました。ネパールでは、モンスーンによる大雨が降り始めていることに加え、今でも余震が頻発しています。損傷を受け、いつ損壊するかもわからない家に住むことは非常に危険で、人命が奪われるかもしれません。(スタッフが作成した)現地報告書では、ポカラにあるNGO「Yes Helping Hand(はい、援助)」に対し、仮設シェルターの建設のための資材を提供するよう助言がなされました。同NGOは、自立生活協会ネパールの助言を受入れ、資材が村の家族のところに届けられました。トゥマコダンダ村の自助グループのリーダーに建設工程の監督をして欲しいと依頼したところ、承諾してくれたことは喜ばしいことです。

イルカの障害当事者メンバーによる街頭募金活動

自立生活センター・イルカの障害当事者メンバーは、ネパールで被災障害者を支援しているCILの活動を支援するため、5月12日から、沖縄県庁前の県民広場で募金活動を行ってきました。7月21日現在、合計15回の募金活動を行っています。

ネパール救援募金にご協力お願いします!

郵便ゆうびん振込ふりこみ

 口座こうざ番号ばんごう:00140-7-429771

 口座こうざ名義めいぎ東北とうほく関東かんとう大震災だいしんさい障害者しょうがいしゃ救援きゅうえんプロジェクト

 *通信欄つうしんらんに「ネパール被災ひさい障害者しょうがいしゃ救援きゅうえん基金ききん」とおきください。